パブリシティ

連載5

―補完代替医療総覧―患者の問いに答えるために

 

長谷川 淳史(TMSジャパン代表)

全人的アプローチを掲げる補完・代替医療の世界的潮流と未来、そこに垣間見える光と影を探る。



CAMと“クワッカリー”

イカサマ師やインチキ療法を意味するクワッカリー(quackery)は、アヒルやガチョウの鳴き声を表すquackという擬声語に由来する名称で、クワックサルヴァー(quacksalver)とも呼ばれている。クワッカリーには、虚偽の効能効果を標榜した医薬品もどきや化粧品、ブームに便乗した意味のない食品や不必要な栄養補助食品(サプリメント)、そして偽物医療機器の3種類が存在する。

最初にクワッカリーを選んだのは、CAMとクワッカリーとは切っても切れない表裏一体の関係にあり、明確に区別することが困難だからである。アメリカの「NCAHF(反健康詐欺国民協議会:National Council Against Health Fraud)」や「Quack Watch」、イギリスの「Health Watch」など、クワッカリーによる被害を防ぐために活動している組織や団体は、エビデンスがないという理由でほぼすべてのCAMをクワッカリーと断定しているほどだ。

しかし、これまで述べてきたように、現代医学の中でも強力なエビデンスに支えられた治療法はごくわずかでしかない。事実、つい最近まで経験的に有効と信じられてきた治療法が無効だった、あるいはかえって有害だったことが次々と明らかになっている。
たとえば、腰痛患者に対する安静臥床の指示は回復を遅らせること、変形性膝関節症に対する関節鏡下デブリドマン(郭清術)による症状改善はプラシーボ効果だったこと、心臓マッサージと人工呼吸の回数の割合は15:2よりも30:2の方が蘇生率は上昇することなどなど、数え上げれば枚挙にいとまがない。

したがって、エビデンスの有無を基準にクワッカリーを定義しようとすれば、現代医学が行っている治療法の多くはインチキ療法ということになってしまう。

そこで参考までに、FDA(アメリカ食品医薬品局:Food and Drug Administration)が提供しているクワッカリーの見分け方を挙げておこう。

(1) いとも簡単に、すぐさま効果が得られると約束する。
(2) 「新発見」「奇跡的」「秘密の治療」「唯一」「臨床試験で立証済み」などというフレーズを使って宣伝する。
(3) たったひとつの製品やサービスで、ありとあらゆる病気が治ると主張する。
(4) 科学者でも健康管理の専門家でもないイカサマ師が科学的調査などするわけがなく、金を目当てに製品やサービスを売り付けていることを忘れてはいけない。
(5) 保証書は販売会社を信用させるためのものであって、実際には返金保証されないことがある。
(6) あまりにもうますぎる話は、クワッカリーの可能性が高い。

また、健康情報の読み方に詳しい小内亨は、旧厚生省薬務局監視指導課が監修したハンドブックを参考に、以下のような見分け方を示している。

(1) その製品またはサービスが、他では得られない「秘密の治療」「最新の発見」に基づくものだといっている。
(2) その医療は、自称ヘルスアドバイザーによって訪問販売されていたり、各地で講演を行ったりして、宣伝販売促進されている。
(3) その「奇跡」の製品は、一般誌において信仰療法家グループや宗教団体によって宣伝し、販売促進されている。
(4) 宣伝販促員は、その製品またはサービスによって他の人が体験した素晴らしい奇跡について説明している。
(5) 事の真偽は別として、その製品またはサービスが、いろいろな疾病に有効であると言っている。
(6) 到底真実とは思えないほどの素晴らしい効果が得られると約束している。
(7) その製品や宣伝販促員の説明において、治癒したという人々の感謝の手紙が使用されている。
(8) 「奇跡」「奇跡的」「完治」「成功」「万病に効く」といった言葉が宣伝に使われている。このような言葉は科学的ではない。重篤な病気が、一般に通信販売などで治せるわけがないし、素人が自己判断できるようなそれほど重篤でない疾病を治す程度の製品は、到底奇跡的などというものではないのである。

現在の厚生労働省も、医薬品以外の製品の容器・包装・添付文書・チラシ・パンフレット・刊行物・広告宣伝物・演述による効能効果の標榜を禁じており、各都道府県知事あてに通知を出して注意を促している(表1参照)。

 

表1.禁止されている医薬品的な効能効果の標榜

(1)疾病の治療または予防を目的とする効能効果

(例)糖尿病・高血圧・動脈硬化の人に、胃十二指腸潰瘍の予防、肝障害・腎障害を治す、ガンがよくなる、眼病の人のために、便秘が治る等   

(2)身体の組織機能の一般的増強・増進を主たる目的とする効能効果

(例)疲労回復、強精(強性)強壮、体力増強、食欲増進、老化防止、勉学能力を高める、回春、若返り、精力をつける、新陳代謝を盛んにする、内分泌機能を盛んにする、解毒機能を高める、心臓の働きを高める、血液を浄化する、病気に対する自然治癒力が増す、胃腸の消化吸収を増す、健胃整腸、病中・病後に、成長促進等

(3)医薬品的な効能効果の暗示

  1. 名称またはキャッチフレーズよりみて暗示するもの
    (例)延命○○、○○の精(不死源)、○○の精(不老源)、薬○○、不老長寿、百寿の精、漢方秘法、皇漢処方、和漢伝方等

  2. 含有成分の表示および説明よりみて暗示するもの  
    (例)体質改善、健胃整腸で知られる○○○○を原料としてこれに有用成分を添加、相乗効果をもつ等

  3. 製法の説明よりみて暗示するもの  
    (例)本邦の深山高原に自生する植物○○○○を主剤に、△△△、×××等の薬草を独特の製造法(製法特許出願)によって調製したものである等 

  4. 起源、由来等の説明よりみて暗示するもの  
    (例)○○○という古い自然科学書をみると胃を開き、欝(うつ)を散じ、消化を助け、虫を殺し、痰なども無くなるとある。こうした経験が昔から伝えられたが故に食膳に必ず備えられたものである等

  5. 新聞・雑誌等の記事、医師・学者等の談話、学説、経験談等を引用または掲載することにより暗示するもの  
    (例)医学博士○○○○の談「昔から赤飯に○○○をかけて食べると癌にかからぬといわれている。………癌細胞の脂質代謝異常ひいては糖質、蛋白代謝異常と○○○が結びつきはしないかと考えられる」等
(厚生労働省,無承認無許可医薬品の指導取締りについて,2004)

 

こうしてみると、エビデンスの有無が問題なのではなく、文字通り鳴くか鳴かないかがクワッカリーの判断基準と考えてよいだろう。要するに、「ガーガーガーガー」「ピーチクパーチク」「ペチャクチャペチャクチャ」と声高に自慢話をする者は、イカサマ師呼ばわりされても仕方がないというわけだ。

    巧言簧の如し 顔之厚し ――詩経―-

    信言は美ならず 美言は信ならず
    善なる者は辯ぜず 辯ずる者は善ならず
    識る者は博からず 博き者は識らず ――老子――

    巧言令色 鮮し仁 ――孔子――

 日頃の発言には、十分に注意したいものである。

(以下、次号につづく)