連載11

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全人的アプローチを掲げる補完・代替医療の世界的潮流と未来、そこに垣間見える光と影を探る。
コーヒー浣腸の有効性
わが国でも約 10 万人の愛用者がいるとされるコーヒー浣腸(腸内洗浄)は、体内から毒素や老廃物を排出することで、便秘・ダイエット・肌荒れ・健康増進・活性酸素除去・老化防止・免疫力向上・肝機能強化・疲労回復・ガン予防などに有効だという。さらに、ガン・ 心臓病・肝臓病・腎臓病・糖尿病などの完治には、絶対に欠かせないと主張する者までいる。
これが事実ならすぐにでも飛びつきたくなるが、コーヒー浣腸には医学的なコンセンサスもなければ科学的根拠もないため、こうした主張をそのまま信じるわけにはいかない。本来、コーヒー浣腸は健康法としてではなく、ガンの治療法として開発されたものであり、しかもガンに対する有効性さえ現時点では証明されていない。
だが、科学的根拠がない、あるいは有効性が証明されていない、というだけで安易に結論を下すべきではないだろう。なぜなら、コーヒー浣腸の効果は臨床試験で確かめられていないからである。すなわち、コーヒー浣腸が有効か無効かは、現時点では不明だということであって、それ以上でもそれ以下でもないのだ。コーヒー浣腸の有効性を明らかにするためには、ニコラス・ゴンザレスが取り組んでいるような厳密な臨床試験が必要なのである。
とはいうものの、デトックス健康法を信じて日常的にコーヒー浣腸を行なった場合、かえって健康上の問題を引き起こす可能性があるのも事実だ。
コーヒー浣腸の 安全性
コーヒー浣腸はけっして安全ではない。時には命にかかわるような合併症を引き起こすことがある。
たとえば、エイゼル とリエイはコーヒー浣腸によって電解質バランスが崩れて死亡した2例を報告しているし、マーゴリン とグリーンもゲルソン療法で治療中の 23 歳の女性がコーヒー浣腸による複数菌感染から敗血症で死亡した例を報告している。
また、カイロプラクティッククリニックで腸内洗浄を受けた患者を調査したイストレらの報告によると、 1978 年6月から 1989 年 12 月までの間に、少なくとも 36 名が腸管赤痢アメーバを発症していたことが判明したという。
そこまで重篤な合併症に至らないまでも、コーヒー浣腸を頻繁に繰り返していると次第に便意を感じなくなって重い排便困難に陥ったり、逆に腸粘膜が過敏になって裏急後重(頻繁に便意を催すこと)を引き起こしたりする危険性もある。
したがって、安全性を考えるのならば、コーヒー浣腸は自宅やエステティックサロンで行なうのではなく、不測の事態にも迅速な対処ができる医療機関で行なうのが望ましい。
コーヒー浣腸の 費用対効果
現在、わが国で市販されている腸内洗浄器具セットの価格は約 1 万円、それに 30 回分のオーガニックコーヒーも約1万円で流通している。自宅で自らコーヒー浣腸を行なうならこの程度で済むが、エステティックサロンや医師が開設しているクリニックともなると、 1 回1万5千円〜2万円程になるようだ。
もっとも、医師免許を持たない エステティシャンが 腸内洗浄を行なうのは医師法違反になるため、摘発を受けた 2003 年以降はコーヒー浣腸を 行なう エステティックサロンが 激減している。
いずれにせよ、明らかに誤った理論的根拠、不明確な効果、命を落としかねない合併症を考えると、はたしてコーヒー浣腸に数万円もかけるメリットがあるのか疑問である。
そもそも、 腸管は細菌や毒素の侵入を阻止するようにできているし、万が一体内に有害物質が侵入したとしても、肝臓という化学工場が有害物質を分解して腎臓から排出するようになっている。こうした一連のプロセスは、いくらデトックスをうたう製品を購入したりサービスを利用したりしても向上するわけではない。
もちろんプラシーボ効果は期待できるだろうが、コーヒー浣腸への 入信はよくよく考えてから決めた方がよい。
<参考文献&ウェヴサイト>
・コーヒー浣腸で腸内洗浄
(http://detox.no.land.to/about-detox/)
・コーヒー浣腸でガン予防!
(http://www.d-hourenso.com/coffee/detail.html)
・新谷弘実『ニューヨーク式腸の掃除法』主婦の友社, 2001 .
・マックス・ゲルソン『ガン食事療法全書』 徳間書店 , 1989 .
・シャルロッテ・ゲルソン&モートン・ウォーカー『 決定版 ゲルソンがん食事療法』 徳間書店 , 2002 .
・ゲルソン式食事療法(コーヒー浣腸)
(http://www.ipe-world.com/gerson/gerson-ipe-g7.html)
・デトックス
(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%83%88%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9)
・宿便
(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%BF%E4%BE%BF)
・浣腸(腸内洗浄)のすすめ
(http://www.h7.dion.ne.jp/~akahige/kancho/kancho.html)
・ Gerson M . The cure of advanced cancer by diet therapy: a summary of 30 years of clinical experimentation , Physiol Chem Phys , 10(5) , p449-464 , 1978 .
・Watts JC , Not such distant mirrors. Coffee enemas may be effective shock treatment , BMJ , 320 ( 7231 ) , p 383 , 2000 .
・ホリスティック栄養学研究所
(http://www5f.biglobe.ne.jp/~hni/n-qa/qa2_nutrition/qa2_nu070327-008.htm)
・ Green S , A critique of the rationale for cancer treatment with coffee enemas and diet , JAMA , 268(22) , p3224-3227 , 1992 .
・ Cassileth BR & Deng G , Complementary and alternative therapies for cancer , Oncologist , 9 ( 1 ) , p 80-89 , 2004 .
・ Josefson D , US cancer institute funds trial of complementary therapy , West J Med , 173(3) , p153-154 , 2000 .
・ Eisele JW & Reay DT , Deaths related to coffee enemas , JAMA , 244 , p1608-1609 , 1980 .
・ Margolin KA & Green MR , Polymicrobial enteric septicemia from coffee enemas , West J Med , 140(3) , p460 , 1984 .
・ Istre GR et al , An outbreak of amebiasis spread by colonic irrigation at a chiropractic clinic , N Engl J Med , 307(6) , p339-342 , 1982.
・ “ 腸内洗浄 ” にはリスクがいっぱい!
(http://health.goo.ne.jp/column/healthy/h002/0051.html)
・腸内洗浄の危険
(http://xn--u9j090he26a.seesaa.net/article/44869299.html)
・医師免許なしに腸内洗浄の疑い,朝日新聞, 2003 年 1 月 15 日付.