| ■ TMSとは | ||||
| TMSとは、「Tension Myositis Syndrome」の頭文字からとった略称で、日本語に訳すと「緊張性筋炎症候群」ということになります。しかし、「筋炎」といっても筋肉に「炎症」があるという意味ではなく、筋肉内に何らかの変化があるという意味でしかありません。この理論を開発したジョン・E・サーノ博士は、TMSの定義を「痛みを伴う筋肉の生理的変化」としています。 またTMSは、これまで単独の病気によって生じると考えられていた筋骨格系のさまざまな症状を、ひとつの症候群としてまとめたものです。たとえば、肩こりと呼ばれている首や肩、背中の痛みをはじめ、腰痛、臀部痛、上肢や下肢の痛みやしびれ、さらに四十肩、五十肩と呼ばれる肩関節の痛み、肘、手首、股関節、膝、足首の痛みまで、これらはすべて共通した原因によるひとつの症候群だと考えます。 これは、サーノ博士の長い臨床経験の中から導かれた結論で、以下の表に示す疾患のすべてをTMSとして取り扱います。なぜなら、これらの症状はTMS治療プログラムによって、95パーセント前後の確率で改善させられるからです。
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| ■ TMSの標的組織 | ||
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緊張性筋炎症候群というからには、主に筋肉の疾患と思われるかもしれませんが、研究が進むにつれて筋肉以外の組織にも同じ病態が存在することがわかってきました。それは「神経」と「腱・靭帯」という組織です。つまりTMSは、3つの組織に生じる症候群ということになります。 筋肉がTMSに冒された場合、その症状は四肢の筋肉というよりも、いわゆる「姿勢筋」と呼ばれる部位に現れやすい傾向があります。姿勢筋とは、首の後ろ側、肩の上部、背中や腰、そして臀部の筋肉を含み、姿勢を保つとともに腕の運動を助ける働きがあります。 興味深いのは、ある特定の筋肉に痛みが生じるだけではなく、かなり広範囲にわたって痛みを感じたり、複数の筋肉に痛みを訴える患者が多いことです。しかもその痛みは、日によって強さが変わったり、移動することさえあります。 神経が冒された場合は、主に神経痛となって現れます。もっとも多くみられるのは、臀部や太ももの後ろからふくらはぎにかけて、あるいは脛(すね)にかけての痛みやしびれです。こうした症状を坐骨神経痛といいますが、ときには爪先をそらす力が弱かったり、つま先立ちができないという、筋力低下がみられることもあります。 次に多いのは、腕から手にかけて痛みやしびれが生じる上腕神経痛です。この場合も痛みだけでなく、握力が弱くなったり指先の感覚が鈍くなることがあります。他にも肋間神経痛や顔面神経痛などがありますが、神経が通っているところは、すべてTMSに冒される可能性があります。
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| ■ TMSは増えている | ||
ところが、筋骨格系疾患に使われる医療費の伸び率が、上記の疾患に次いで第4位というのはあまり知られていません。それも、他の疾患の伸び率は、ほぼ横ばい状態かやや減少しているにもかかわらずです。 1997年度の調査によると、筋骨格系疾患の治療に約2兆円が使われているといいます。しかし、医療施設を受診する腰痛患者は全体の42パーセントに過ぎず、患者の半数以上は健康保険が使えない代替医療や市販薬などで対処しています。となると、筋骨格系疾患の治療費は、少なく見積もっても4兆円はくだらないでしょう。これは世界中の地雷をすべて除去してもおつりがくる金額です。 |
| ■ TMSが増えるわけ | ||||
| これはいったいどうしたことでしょう? 従来の医学は役立たないのでしょうか? どこか間違っていたのでしょうか? なぜ筋骨格系疾患の増加を食い止められないのでしょう? TMSが増えている理由は5つ考えられます。
第3の理由は、効果的な治療法がないからです。原因がわからなければ、症状を取り除くことは不可能です。しかし、すべての治療法に効果がないという意味ではありません。治療によって治ったのか、それとも自然に治ったのかは、まだ科学的に証明できていないということです。それに何よりも、多くの統計が示しているように、今ある治療法で筋骨格系疾患が減らないのは明らかな事実です。 第4の理由は、慢性化したり再発を繰り返すからです。たしかに、筋骨格系疾患の85パーセントは2週間以内に治ります。それにもかかわらず増え続けるのは、いつまで経っても痛みが治まらず、どんな治療を受けても治らない慢性の痛みがあるからです。それにくわえて、何度も再発する傾向もあります。これが筋骨格系疾患の増加という形となって数字に表れているのです。 そして第5の理由は、わたしたちは「現代の呪い」にかけられているからです。医学界だけでなくあらゆるマスメディアは、よってたかって患者に否定的な信念を植えつけています。 筋骨格系疾患の原因は、老化現象・筋力低下・不良姿勢にあるというのがそうです。重い物を持ってはいけない・腰を反らせてはいけない・柔らかいマットレスに寝てはいけないという警告も同じです。あげくの果てには、腰痛や肩こりは「直立二足歩行する人類の宿命だ」とまでいい出しました。
ここで筋骨格系疾患が増える理由をまとめておきましょう。
ただ、誤解のないように付け加えておきますが、医学界が本気で取り組んでいないというのは正確でないかもしれません。医療関係者は、例外なく患者さんのために手を尽くしているからです。それに、悪気があって呪いをかけている人はひとりもいません。教科書に書いてあることを素直に信じ、それを呪文のように患者さんに伝えているだけなのです。 |
| ■ TMSの原因 | ||||
では、どうして自律神経系が血管を収縮させるのか、という疑問が出てきます。サーノ博士はTMS、すなわち緊張性筋炎症候群の「緊張」の意味について、次のように述べています。 『この疾患名の「緊張」は、無意識下で生み出され、ほとんど無意識の外に出ることのない感情を指す。その多くは、不快、苦痛、きまり悪さを伴う感情で、本人にも社会にも受け入れられず抑圧される。抑圧が起きるのは、これらの感情を味わいたくない、これらの感情を抱いていることを周りに知られたくないと心が思うからだ。自覚できるのであれば真正面から向き合おうとするのだろうが、いかんせん、人間の心は無意識下の感情を自覚するようにはできていない。またたくまに、それも自動的に、これらの感情を抑圧してしまう』 つまりサーノ博士は、ある感情が「抑圧」されることによって、TMSが発症すると考えているのです。「抑圧」とは、心の安定を保ち、精神的破局を避けるための、意識的・無意識的な心の働きである「防衛機制」のひとつです。いわば心の安全装置といえるものです。 それほどまでに忌み嫌わなければならない感情とは、いったい何なのでしょう? 心の痛みよりも、身体の痛みの方を選択させる感情とは何でしょう? わたしたちはどんな感情を恐れているのでしょう? 自分自身を見失ってしまったり、パニック状態に陥るような感情などあるのでしょうか?
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