腰痛治療最前線―TMSジャパン公式サイト-図書室



補完・代替医療総覧(8)

連載8


―補完・代替医療総覧ー
患者の問いに答えるために


長谷川 淳史 (TMSジャパン代表)


全人的アプローチを掲げる補完・代替医療の世界的潮流と未来、そこに垣間見える光と影を探る。


クワッカリーの安全性

そして第3は、クワッカリーによる心理社会的問題である。

第9号で述べたように、絶対に効かないという治療法は存在しないし、信念だけで治ることもある。したがって、いくらクワッカリーといえども、それを信じ込むことで何らかの効果が得られる可能性は大きい。そしてその効果を実感した者は、『三た論法』を用いて周囲の人々にも勧めるかもしれない。

ところが、効果が得られない者やクワッカリーであることを見破る者、あるいは体調を崩す者も出てくる。そうなると、たとえ善意の気持ちからだったとはいえ、周囲の信頼と友人を同時に失ってしまい、心に深い傷跡を残す危険性がある。とりわけ勧めた相手が肉親で、不幸にも健康を損なった場合の心理的ダメージは計り知れないものとなるだろう。

また、マルチ商法(multi-level marketing:連鎖販売取引)という形態をとるクワッカリーも大きな社会問題となっている。ディストリビューターと呼ばれる販売員が知人を勧誘して顧客とし、その販売網をピラミッド型に形成していくマルチ商法自体は違法ではない。しかし、虚偽説明や脅迫などの違法行為を含む勧誘、購入実績を維持するための過剰な買い込み、その購入資金捻出のための借金(クレジット契約)といった被害が後を絶たない。

そこで国民生活センターや消費者センターでは、マルチ商法を悪質商法として注意喚起を促している。「健康になると同時に高収入が得られる」という甘い言葉に踊らされ、金銭や友人を失うことのないように十分注意しなければならない。

ちなみに、国民生活センターが注意を呼びかけている販売手口・商法と、2002年~2006年までに寄せられた過去5年間の相談件数を列挙するので、ぜひ参考にしていただきたい。

【1】アポイントメントセールス(72,346件)
「当選した」等販売目的を隠して、あるいは販売目的を告げてはいるものの特に選ばれたとして有利な条件を強調して電話等で喫茶店や営業所に呼び出して販売する商法。

【2】アンケート商法(21,806件)
「アンケートに答えてほしい」「アンケートをとるだけです」と言って近づき消費者の警戒心を解かせ、商品・サービスを売りつける商法。

【3】SF商法(38,726件)
閉め切った会場に人を集め、日用品などをただ同然で配って雰囲気を盛り上げた後、最終的に目的の高額な商品を売りつける商法。

【4】お礼商法(1,088件)
アンケートを依頼する等、販売目的以外の行為をした後、そのお礼にと販売目的物を使って掃除や裁縫等をして、巧みに販売目的物を売りつける商法。

【5】開運商法(10,834件)
「購入しなければ不幸になる。購入すれば不幸から免れる」という虚偽説明、「運勢が開ける」「幸福になる」というセールストークだけでなく「家系図をみて・・」「姓名判断をして・・」「手相をみて・・」といった商法。商品だけでなく、占いや祈とうサービス等を提供する商法も含む。

【6】かたり商法(67,002件)
あたかも公的機関や有名企業の職員か、その関係者であるかのように思わせるそぶりやトークで商品やサービスを販売する商法。

【7】キャッチセールス(39,439件)
街頭で消費者を呼び止め、喫茶店や営業所・店舗に連れ込み、商品やサービスを契約させる商法。

【8】クレ・サラ強要商法(7,042件)
売買契約の際に無理やりサラ金等から借金をさせたりクレジット契約を組ませたりする商法。

【9】原野商法(1,732件)
ほとんど無価値で将来の値上がりの見込みがほとんどない土地を、値上がりするかのように偽って売りつける商法。

【10】講習会商法(1,687件)
消費者宅以外の会場で講習会や講演会を開催し商品等を売りつける商法。

【11】サイドビジネス商法(128,117件)
「内職・副業(サイドビジネス)になる」「脱サラできる」等をセールストークに何らかの契約をさせる商法。

【12】士商法(6,503件)
「もうすぐ国家資格になる」「受講するだけで資格がとれる」など資格そのものに関する虚偽の説明でつって、講座や教材を契約させる商法。

【13】下取商法(3,882件)
下取りすることをうたって売りつける商法。

【14】実演商法(3,307件)
実演による販売方法に問題のあるもの。

【15】実験商法(7,070件)
化学実験めいたことをしてみせて、「当該商品を使わないと危険だ」等と不安をあおったり、当該商品がいかに効果的か等の化学的裏付があるように思わせて売りつける商法。

【16】就職商法(3,777件)
仕事やアルバイト等の求人・雇用をかたって人を募り、何らかの契約をさせる商法。

【17】体験談商法(2,787件)
使用・実行して効果・効能があったという体験者の体験談を広告宣伝に利用する商法。

【18】デート商法(8,451件)
主に異性間の感情を利用してデートを装って勧誘する商法。

【19】点検商法(59,830件)
「点検にきた」と言って来訪し、修理不能・危険な状態・期限が切れているなど事実と異なることを言って新品や別の商品・サービスを売りつける商法。

【20】電話勧誘販売(420,967件)
業者が消費者に電話をかけ、または特定のやり方で電話をかけさせ、その電話における勧誘により、郵便等で契約を締結する販売方法のこと。

【21】当選商法(33,932件)
「当選した」「景品があたった」「あなただけが選ばれた」などと特別な優位性を強調して消費者に近づき、商品やサービスを販売する商法。

【22】ネガティブオプション(26,384件)
送りつけ商法。注文されていない商品を一方的に送りつけ、消費者が受け取った以上義務があると勘違いして代金を支払うことを狙った商法。

【23】便乗商法(680件)
何かに便乗する商法。

【24】福祉商法(5,191件)
福祉をうたい文句に商品を売りつける商法。

【25】ホームパーティ商法(681件)
消費者の自宅を会場にして近所の人等を集めて料理や実演等をする販売方法。

【26】マルチ・マルチまがい商法(104,264件)
商品・サービスを契約して、次は自分が買い手を探し、買い手が増えるごとにマージンが入るネズミ講式の取引形態。買い手が次にその販売組織の売り手となり、組織が拡大していく取引方法。

【27】見本工事商法(1,611件)
見本工事のための特別料金だと思わせて売りつける商法。

【28】無料商法(183,345件)
「無料招待」「無料サービス」「無料体験」など「無料」をセールストークや広告にして人を集め、高額な商品やサービスを売りつける商法。

【29】モニター商法(6,121件)
「モニター料を支払う」といって商品を販売したり、モニターになることを条件に商品を特別に(安く)提供すると思わせて売りつける商法。

【30】薬効うたって勧誘(19,527件)
「アトピーがよくなる」「病気が治る」など、本来うたってはいけない薬事的効果をうたって、商品やサービスを売りつける販売方法。

【31】利殖商法(26,637件)
「高利回り」「値上がり確実」など利殖になることを強調して勧誘する商法。


(次号につづく)

代替医療通信, 第11号, 2007.

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